教員の資質向上策推進のための体制整備進む

 8月末に文部科学省が公表した平成30年度機構・定員要求の主要事項に「総合的な教育改革を推進するための機能強化イメージ(案)」が示された(以下のURL3ページ目)。
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2017/08/30/1394952_3.pdf

 現在、文科省の教員政策は、免許制度に基づく教職課程認定や教員の採用・研修は初等中等教育局の教職員課が所掌し、大学における教員養成政策全般は高等教育局の大学振興課が主に担う。中央教育審議会等において、このことを問題視する委員の発言(多くは大学関係者)も多く、初中局と高等局の二元構造が教員の資質向上策推進の足かせになっていると考えられる。

 最近では、高等局主導で国立大学のミッションの再定義が行われ、結果、教職大学院が全国に拡充された。しかし、それぞれの都道府県教育委員会において教職大学院を研修のどこに位置付けるかはバラバラだし、ストレートマスターの採用試験一部免除、初任者研修一部免除等のインセンティブ付与も統一的な見解があるわけではない。
 また大学に対し、養成した教員の成長をフォローしてデータを蓄積するよう要望が出されるが、多くの教育委員会は特定の機関に対して教員情報を提供するようなことはしない。
 大学関係者にとってこうした政策の進め方はちぐはぐに映るのだろう。

 イメージ案は、教職員課と大学振興課の教員養成部分(教員養成企画室)を統合して「教育人材育成課」に再編する。これにより教員の養成・採用・研修が一体的となり、現在文科省が進める教員の資質向上策は大きく進展すると考えられる。
 8/29にまとめられた「国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議」の報告書の提案も一気に進むだろう。国立教員養成大学・学部の規模縮小、教職大学院への重点化、さらに附属学校についても県教委等との関係性のもとに改善が図られる。

 一方で高等局から離れることのデメリットはないか。学部・学科の運営は大学教育全体の改革動向、予算措置等と切り離すことはできない。さらに大学は学問の府であり、いかに実践性が求められる教員養成とはいえ行政サイドとの適度な距離感は必要である。
 また、教員養成政策が学校現場の課題に対応できていないとの指摘がある中、初中局から離れることで状況が悪化しないか。先の報告書は、「総合的な学習の時間」の質が学校現場で問題となって久しいが、多くの教職課程で必修に位置付けられていないことを指摘している。学校現場の課題をいち早く教員養成政策に反映させる手立てが必要である。

 このイメージ案について、機構・定員要求の冒頭、「将来の我が国の社会を創造する「人づくり」の実現を期し、「教育アクセス」の確保・充実をはじめとする総合的な教育政策の推進のための体制整備」と短く説明されている。
 教育アクセスは、教育人材に関わる人や組織間の情報の共有、連携や協働、人の交流を示すと思われるが、そのことで教育人材を取り巻く環境が「閉じた」ものにならないよう「開かれたアクセス」が肝要となろう。(S)

2017年09月15日