教職大学院中心の国立教員養成大学・学部・附属学校改革案まとまる

 文部科学省に置かれた「国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議」が1年間の議論を重ね、8/29に報告書を取りまとめた。本有識者会議は、教員需要の減少期到来を見据え、国立教員養成大学・学部に関わる機能を量的に縮小しつつも、限られた資源の中で教員養成機能を現状より高め、教師教育全体の質の向上に資するための改革方策等を検討するために設置された。

 我が国の教員養成は、平成17年の「教育分野における抑制方針の撤廃」以降、私立大学等の一般大学・学部が存在感を示し、公立学校教員採用試験で教員採用数に占める国立教員養成大学・学部の割合は、小学校33.4%、中学校24.2%、高校13.9%、特別支援学校26.1%(平成28年度採用選考)にとどまる。また、国立教員養成大学・学部の教員への就職率は、近年では平成23年の63%をピークに減少傾向にある(平成28年3月卒業生59%)。

 教員養成において私立大学等の存在感が増す中、公立小中学校の教員需要は、平成34年度には平成28年度に比べて6%減少することが予測され、平成35年度以降も減少傾向にあるという。こうした背景から国立教員養成大学・学部の存在意義が問われている。

 有識者会議は、国立教員養成大学・学部・大学院・附属学校の現状について、学長や学部長、附属学校の校長や学生、教育委員会に対してアンケート調査を実施。学部・大学院・附属学校それぞれの課題について、具体例と数値を挙げて改善の必要性を述べている。
 例えば、教育・研究成果の地域社会への還元、連携や人事交流の捉え方等について、大学・附属学校側と教育委員会側に認識のズレがあり、大学・附属学校において、社会が要請する人材育成や地域貢献がなされていないこと等が指摘されている。

 一方、国立教員養成大学・学部で教職大学院の開設が進み、来年度には鳥取県を除く全都道府県への設置が完了。報告書において、教職大学院への重点化、機能強化に関し5ページにわたり記されているように、国立教員養成大学・学部・附属学校の改革は、教職大学院の強みや特色を再確認した上で課題を改善し、そこに機能を集約することで実現できるとされている。

 教職大学院が解決すべき課題に、大学院レベルで教科の指導力を向上させたいという受講者ニーズに対し、教職大学院において教科領域をどう取り入れるか、その方向性がいまだ見いだせていないことが指摘されている。理論と実践の往還を取り入れた教科領域の導入は、教職大学院の機能強化において必要不可欠であり早急に解決すべき課題である。
 報告書は、学部と教職大学院の接続を重視した新たな教員養成の在り方や、附属学校教員が教職大学院を受講して地域に戻っていく、場合によっては教職大学院で教えるなど、教職大学院と附属学校を活用して地域の教育力を高めることも提言している。

 教職大学院の機能強化を中核に据えた国立教員養成大学・学部・附属学校の改革には、教育委員会はじめ学校現場の理解、協力が不可欠となる。教育委員会が現職教員の派遣を渋ったり、教職大学院や附属学校を活用した新たな人事制度を検討することに取り組まなければ、報告書は絵に描いた餅に終わる。
 大学の努力はもちろんのこと、全国に広がった教職大学院の活用を促すような手立てが、教職大学院の機能強化を推し進めるために必要だろう。(S)

2017年08月30日