「教職センター」の役割について

 平成24年の中教審答申「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」は、「教職センター」について、総合大学の有する資源・機能の教員養成に対する活用や、教育学部の有する資源・機能の全学的活用等の観点から有効であるとし、多くの大学で同様の取組を推進することが必要としている。
 この場合、「教職センター」の役割は、主に開放制教員養成の推進と質の向上に置かれていると考えられる。

 現在、私立大学を中心に、全学的な組織として「教職センター」を設置する大学が増え、採用実績上位校のホームページを調べると、東西問わずほとんどの大学が同様の組織を置いている。
 その中で、センターの構成を見ていくと、大きく2つのパターンに分けられるように思われる。

 1つは、主に教育実習や教職実践演習、教科指導等の科目を担当する教員を構成員として配置し、教育学部を含む全学の教職課程をカバーするケースで、もう1つは、主に教育学部以外の学部・学科の教職科目を担当するケースである。
 いずれのケースも平成24年の中教審答申の趣旨を踏まえたものと思われるが、教員養成の要となる教育学部の在り方に違いがあるように思う。

 前者の場合、従来指摘されている「教科に関する科目」の担当教員が学校教育への関わりが少ないという指摘とともに、「教職に関する科目」の担当教員についても、実習や実践演習への関わりが減ることで、教育学部全体として学校教育との関わりが少なくなっているように思う。
 後者の場合、教育学部自体は単体でほぼ完結した養成を行っており、センターを通して、他学部の教職科目の一部をもサポートするような仕組みである。教育学部内ではほとんどの教員が実習等に関わる。

 平成27年の中教審答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」は、教員養成に関する改革の具体的な方向性として、教員養成学部が中心となり、教員養成を全学的に推進していくための体制整備を挙げている。
 ここに、教員養成の中心は教育学部であり「教職センター」ではないことが読み取れよう。
 今後、さらに多くの大学で「教職センター」の設置が進むと思われるが、そのことで教育学部の養成の質が低下するようなことがあってはならないのは当然であろう。(S)

2017年06月16日