新たなスキームへの期待

 平成27年の中教審答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」を受け、昨年、教育公務員特例法等の一部を改正する法律が成立した。これにより現職教員の研修を充実して教員を高度化する枠組みが整えられた。
 文部科学省が示す「新たなスキーム」によって、これまで教育委員会独自に行ってきた研修は、地域の大学の合意のもとに行うことが事実上義務づけられ、教員は職種や経験年数に応じて高度化に向け育成されることになる。

 ある地方大学は、教育委員会との連携が実を結び、今年から教頭採用試験の受験予定者を対象とする「学校管理職養成講習」を提供するという。「育成指標」にもとづく研修であることから、開設科目を受講し、講習が目指す資質能力を身につけたという証明をどうやって行うかという課題もあるが、管理職登用資格を得る前に、管理職に必要な資質能力を身につけさせる研修を大学と教育委員会が連携してスタートさせたことの意義を重視したい。

 4月には大学と教育委員会、学校現場をつないで「ハブ」の役割を果たす教職員支援機構がスタートした。先の地方大学の取組は、機構の「こけら落とし」といえる協議会で発表されたものだ。
 発表の後、質疑に応じた担当者は「皆さんもこれから、相当苦労されると思います」というコメントを残している。法律が変わり、制度の枠組みが整ったからといって大学と教育委員会が突然両輪で動き出すわけではない。
 形だけの協議会を置き、代表者を集めて年に数回集まるだけでは、これまでの水と油のように分離したままで、混ざり合うこともないだろう。

 この高度化において大学に求められるのは、協議会での活動や講座の開設において、これまでの研究知を実践に照らして意味づけすることだ。
 そして教育委員会には、子供たちの成長を第一に考えて、これまでの慣例を打ち破るような取組を期待したい。
 さらに機構には、与えられた助言機能をフル活用して大学と教育委員会の苦労を共に分かち合いながら、自らの存在意義を意味づけしてもらいたい。(S)

2017年04月26日