『シナプス』について

 『シナプス』は神経細胞どうしが接合する部位をあらわす名称です。イオンのやり取りを通じて神経細胞間の情報伝達を行い、細胞どうしを「つなぐ」役割を担います。教員養成を行う大学と教育実践を行う学校現場、そして教員の資質向上を一義的に担う教育委員会や関係諸機関を、様々な情報を通じて「つなぐ」ことをめざし、雑誌に『シナプス』というタイトルをつけました。

 『シナプス』の創刊を企画したのは、中央教育審議会に「教員の資質能力向上特別部会」が設置され、国レベルで初めて教員養成修士レベル化の検討が行われているときでした。およそ2年間の議論を経て、平成24年8月にまとめられた答申「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」は、教員養成の修士レベル化を「改革の方向性」と位置づけて将来実現すべき課題として示すとともに、「当面の改善方策」として教員養成を修士レベル化するまでに必要な具体的条件整備を提言しました。現在の教員制度改革は、この答申の実現に向けて着実に歩みを進めていくものです。

 ところで大学の教員養成に対し、教員免許制度という資格制度以外で、国が改善を求めるよう提言をし、実行を促したのは平成18年の中教審答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」からと思われます。これ以降、現在まで教員養成・免許制度は、2つの答申(平成24年「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」、平成27年「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上に向けて」)と1つの協力者会議報告(「大学院段階の教員養成の改革と充実等について」)を受けて大転換期を迎えています。

 現在進められている制度改革の特徴に、教員免許制度や教員育成制度そのものを改善すると同時に、大学に対して、教育内容の中身や教育体制の充実といった大学自体の質の向上を求め、その両輪で教員の資質向上策に取り組もうとしている点を指摘することができます。以前は大学の自主性・自律性のもと、社会や学校現場に必要とされる養成や研修へ主体的に参加し、工夫・改善することが期待されてきましたが、もはやそれでは改革のスピードに追いつかないという判断がなされたものと思われます。

 教育委員会に対しては、平成27年の中教審答申を受けて教育公務員特例法等が一部改正され、「教員育成指標」や「教員研修計画」の作成、さらに地域の大学と連携するための「協議会」の設置が義務づけられました。「教員研修計画」は毎年度作成することとされ、来年3月までに最初の計画を文部科学省に報告する必要があります。やはり、これまでと比べて国が、各教育委員会に対してスピード感をもって教員の資質向上に取り組むよう求めていることが感じ取れます。

 特に「協議会」は、教育委員会と大学、学校関係者等が膝を突き合わせ、教員の資質向上について互いに情報を共有し、課題を述べ合い、新たな仕組みを構築して評価し、見直すための枠組みとして置くもので、学び続ける教員を協働して育成するため、大学と教育委員会、学校現場を具体的に「つなぐ」基盤をどのように構築し運用するか、今まさに全国で検討がなされていることと思います。

 このようにかつてない方法で教員の資質向上策が進められる中、大学と教育委員会、学校現場や関係諸機関を見据えて双方向的な情報提供を行い、教員の資質向上に関わる方々を「つなぐ」ことは今後ますます重要になると考えます。

 『シナプス』は、今後も関係の方々と密接に連絡を取りながら、読者の皆様に必要な情報を、そのタイトルにふさわしい内容と方法で常時発信してまいります。(S)

2017年04月21日