編者 土井 進
B5判162ページ 定価:本体1,800円+税
ISBN978-4-909124-63-0 C3037
教師を目指し,信州大学教育学部へ入学してきた学生たちの「もっと子どもたちとふれあいたい」という教員養成カリキュラムに対する不満をエネルギーに変えるため,平成6年6月に「信大YOU
遊サタデー」が,次の方針のもとに発足した。
・学生の「不満」解消への3つの提案 〜子どもたちと大学キャンパスで公開授業〜
① 学生時代でなければできないユニークなアイデアによる“ 学び” や“ 遊び” の体験的学習の場を設定し,学校週五日制時代の教育に貢献する。(大学開放)
② 教育学部には,幼小中高,特別支援学校の児童生徒に対応できる学生が学んでいる。その力量,持ち味を発揮し,子どもたちを大学キャンパスに迎えて公開授業を行うことによって,教育の実践力を身に付ける。(実践的指導力)
③ 教育学部の学生が持っている教育力を地域社会に開き,貢献することによって教育学部と地域社会とのつながりを深める。(地域貢献)
「信大YOU 遊」を実践する学生たちが,筆者に強く迫りました。それは「私たちは,授業の単位が欲しくてこの活動をしているのではありません。また,アルバイトとして報酬を目当てにしているのでもありません。この取り組みが授業科目になると,単位を目当てにして参加してくる学生がいるので,絶対に授業科目にはしないでください!」という強い願いでした。単位もいらない,お金もいらない,という学生たちが求めていたことは,地域の子どもたちとふれあうことであり,積極的に地域社会に貢献することでした。このような自主的・主体的な地域貢献活動を通して,少しでもマシな教育者に成長したいというのが彼らの真の願いでした。この学生たちの真摯な願いを筆者は肝に銘じ,20
年間授業科目化しませんでした。学生たちは,子どもたち・地域社会の人々とふれあいながら,その土地の伝統となっている「信州教育」の精神を深く学ぼうとしました。
本書は「信大YOU 遊サタデー・広場(プラザ)・世間(ワールド)・未来(チャンス)」20 年間の実践は,どのようなものであったのかを振り返り,その意義を究明します。
第一の目的は,教育者を目指す学生たちの原点となった「YOU 遊」の実像を明らかにし,その社会教育的意義を究明することです。それによって,「YOU
遊」の実践に携わり,地域社会に貢献した約3,000 名の学生たちの努力を顕彰したいと考えました。
第二は,学生たちが強い意志力をもって取り組んだ「YOU 遊」20 年の実践を貫いたものは,期せずして「信州教育」の精神であったことを,「信州教育」の先人たちの実践を基に明らかにすることです。
本書を通して,「YOU 遊」を実践した学生たちの情熱と使命感を汲み取っていただければ,これに優る喜びはありません。
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主な目次と内容
はじめに 本書の目的,本書の構成
第Ⅰ部 「YOU 遊」の原点
「YOU遊」のきっかけ,「YOU遊」がなぜ・どのようにスタートしたのか,「YOU遊」の体制を紹介します。
第Ⅱ部 「YOU 遊」20年の実践を貫く信州教育の精神
「信大YOU遊サタデー」(平成6年度〜平成12年度)・「信大YOU遊広場(プラザ)」(平成13年度〜平成14年度)・「信大YOU遊世間(ワールド)」(平成15年度〜平成23年度)・「信大YOU遊未来(チャンス)」(平成24年度〜平成25年度)の20年間にわたる実践を,各年度ごとに編者,学生,有識者の視点から振り返り,その意義を考察します。
第Ⅲ部 「YOU 遊」を実践した学生たちの「学び」
「YOU遊」の実践を通して学生は何を学んだのか。「A.こども理解」「B.教育的愛情」「C.使命感」「D.「遊び」「学び」の教材開発」「E.友情」「F.人と人との絆」の視点を切り口に考察します。
編者紹介
土井 進(どい すすむ) 淑徳大学客員教授 東京教育大学大学院教育学研究科修士課程修了 教育学修士
東京都中学校教諭,お茶の水女子大学附属中学校教諭,信州大学教育学部教育科学講座教授,同大学院教育学研究科教授,同附属松本小学校長,淑徳大学人文学部特任教授,長野保健医療大学大学院保健学研究科・非常勤講師などを歴任