著者 土井 進
A5判166ページ 定価:本体1,800円+税
ISBN978-4-909124-62-3 C3037
教育実習を前にして本書を手にされたみなさんは,教職への第一歩を踏み出すことに大きな喜びを感じるとともに,不安な気持ちも抱いていることでしょう。事前において,不安な気持ちに満ちていたみなさんが,事後において,「本当によかった」「人間として大きく成長できた」と充実した気持ちで振り返ることができるように,本テキストを作成しました。
さて,教育という営みは,生徒を「よくする」という仕事ですが,では,生徒を「よくする」とはどういうことかと自問したとき,実は誰もがわからなくなります。にもかかわらず,教師は「よくする」ための営みに日々取り組みます。
このように,教育はパラドックス的性格をもちます。みなさんが教育実習を前に不安の念にかられるのは,教育のパラドックス的性格と関係しているといえます。それは,「人間として成長途上の私が,生徒を『よくする』ことなどできるのか,教壇に立てるような資質能力があるのか」というおそれとつつしみではないでしょうか。
しかし,こうした教育へのおそれとつつしみの思いをもつことは,教育者が生涯忘れてはならない初心であるといえます。教育にはパラドックスという明らかな困難がありますが,だからこそ,その困難に立ち向かい,教育をおそれつつしみ,あえて教育の仕事を引き受けようとするところに教師としての使命感があるといえます。
教育実習を通して,教職を「自分の本当に好きな事」として再確認されることを期待しています。中学生や高校生は,真摯な実習生の授業を受けることを楽しみに待っています。他人のために役立つ喜びの中に,人としての生きがいがあります。忍耐とは,自分を抑えることではなく,希望をもって耐えることです。みなさんのご健闘をお祈りしています。
『テキスト 中等教育実習「事前・事後指導」』を最新の情報に更新して全面的にリニューアルしました
・教育実習の意義と目的,教育実習事前・事後指導の意義と目的を整理し,教育実習でどんな力を身につけるのかを具体的に示しました。
・「観察実習」「参加実習」「授業実習」の内容・方法と,それらを通じて何を学ぶのかていねいに解説しました。
・教育実習における生徒理解のあり方を具体的に説明しています。
・各章末には「課題」を設定し,授業でのディスカッションに活用できます。
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目 次
第1部 事前指導
第1章 教育実習を受ける前の準備
(1)教育実習の意義 (2)教育実習の目標 (3)教育実習事前・事後指導とは (4)中等教育実習事前・事後指導の意義と目標 (5)教育実習を履修するための要件 (6)教育実習校の決定 (7)中学校3週間(高等学校2週間)の教育実習の流れ (8)教師に求められる実践的指導力
第2章 教育実習生としての基本姿勢・心構え
(1)基本的な心得 (2)身につけておきたい電話のマナー 1)基本的な電話のマナー 2)電話をかける手順 3)その他気をつけること (3)実習校への訪問
—事前打ち合わせの流れ— 1)訪問する前に 2)訪問時の基本姿勢 3)事前打ち合わせの流れ (4)実習生としての勤務 1)勤務しているという意識 2)実習生らしい服装と身だしなみ 3)あいさつと言葉づかいはていねいに 4)報告・連絡・相談の徹底 5)秘密を守る (5)教職員との接し方 1)学生として謙虚に学ぶ姿勢 2)ゆとりから来る気持ちのゆるみ (6)生徒との接し方 1)生徒との信頼関係づくり 2)生徒の顔と名前を覚える 3)生徒のよいところを見つけてほめる 4)問題となるような言葉づかい 5)その他生徒の指導にあたって留意すること (7)緊急時の対応 (8)生徒から相談を受けたら (9)その他注意すべきこと
コラム こんな授業,必修でなければ出たくありません!─「教育実習事前・事後指導」での出来事─
第2部 教育実習
第3章 教育実習のスタート
(1)実習初日のあいさつ (2)1日の実習生活で心がけること (3)実習生としての自覚,実習中止の要件 (4)実習日誌を毎日書く意義 1)1日を有意義に過ごす 2)実践と理論の往還作業
第4章 第1週「観察実習」の学びと学校経営・学級経営
(1)観察実習の内容 (2)観察実習の方法 (3)授業を観察してみよう (4)学校経営と校務分掌の役割 1)学校経営 2)校務分掌 (5)学級経営はどのように行われているか 1)学年経営と学級経営 2)学級担任の仕事と学級経営 3)学級経営の観察ポイント (6)学校図書館の運営 (7)家庭・地域との連携
第5章 第2週「参加実習」の学びと生徒指導
(1)「参加実習」の内容と方法 1)授業の補助,授業の準備・片付けの補助 2)学級活動の補助,学校行事等の補助 3)給食指導・清掃指導の補助 4)始業前・休み時間・放課後における生徒との交流 5)健康観察の補助,環境整備の補助,登下校時の安全指導の補助 (2)授業づくりと指導技術 (3)生徒指導と生徒理解 1)生徒指導の意義 2)生徒理解 3)基本的な生活習慣の指導 4)月の生活目標 5)特別の教科 道徳,特別活動での指導 (4)保健・安全指導はどのように行われているか 1)保健指導 2)安全指導 (5)特別支援教育はどのように行われているか
資料1 「いじめ問題」に立ち向かう生徒指導力を高める知恵 —『塵劫記』の「三容器の協力関係」から学生は何を学んだか—
第6章 第3週「授業実習」の学びと授業の振り返り
(1)「授業実習」の学び (2)学習指導案の位置付け 1)学習指導案を作成する意味 2)教育課程の編成と指導計画 (3)1時間の授業の構成 (4)学習指導案の検討と板書計画 1)目標の明確化 2)教材研究 3)板書計画 (5)学習指導案の実際 (6)伝えるための表現・手段の工夫 1)表現方法の工夫 2)ICT・視聴覚機器の活用 (7)授業の振り返り 1)授業を振り返る視点 2)授業を振り返る方法
資料2 授業における基本的な指導技術「自己点検カード」
第7章 道徳・特別活動の学習指導案づくり
(1)特別の教科である道徳の学習指導案づくり 1)道徳教育はどのように行われているか 2)「題材」の構成 3)道徳科の学習指導過程 4)道徳科の教材開発と指導の工夫 5)道徳科の学習指導案 (2)特別活動の学習指導案づくり 1)特別活動はどのように行われているか 2)学級活動の授業づくり 3)学級活動の学習指導過程 3)学級活動の学習指導案
資料3 中学生に贈る道徳教材 資料4 高校生に贈る道徳教材
第8章 研究授業と授業研究会,実習最終日のあいさつ
(1)教育実習の総まとめ 1)研究授業と授業研究会 2)全日実習 (2)研究授業を成功させるポイント (3)授業研究会の話は簡潔に (4)実習最終日のあいさつ
第3部 事後指導
第9章 教育実習事後指導 —教育実習で何を学んだか—
(1)教育実習を終えて 1)教育実習を振り返る 2)実習日誌の提出・受け取り,大学への提出 (2)教育実習のお礼状の書き方 1)校長先生へのお礼状 2)生徒へのお礼状 (3)実習日誌に見る学生の生徒観・教師観の変容 1)介護等体験によって気づく「人間力」の不足 2)教育実習による実践的指導力の基礎の習得 2−1)子どもと同じ目線に立つ「人間力」 2−2)授業を組織していく難しさ 2−3)子どもを叱る「人間力」 2−4)実践的指導力のなさへの憤り 2−5)子どもの願いを授業に取り入れるゆとり 2−6)苦手な教科の教材開発 2−7)教師としての子どもを見る目 3)生徒と伴走するときに発揮される教師の本領
著者紹介
土井 進(どい すすむ) 淑徳大学客員教授 東京教育大学大学院教育学研究科修士課程修了 教育学修士
東京都中学校教諭,お茶の水女子大学附属中学校教諭,信州大学教育学部教育科学講座教授,同大学院教育学研究科教授,同附属松本小学校長,淑徳大学人文学部特任教授,長野保健医療大学大学院保健学研究科・非常勤講師などを歴任