アンパンマンは正義のヒーローか

篠原 清昭 著
四六判212ページ 定価:本体1,700円+税
ISBN978-4-909124-59-3 C3037

●思考実験Ⅰ アンパンマンは正義のヒーローか
 ある日の放課後、教室であなたが担任するクラスの子どもたち(小学5年生)がアンパンマンについて話をしていました。話はどうやら「正義のヒーロー」が主題のようです。会話が終わった後、そばで聞いていたあなたに子どもたちは「アンパンマンが正義のヒーローなのかどうか」を問うて来ました。
A男「アンパンマンってヒーローにしては弱いよね。顔が濡れただけで弱ってしまうし、新しい顔を自分で作ることができなくて、毎回ジャムおじさんに助けを求めるし。」
B男「そうだよ。第一最強の武器なんて持ってないし。アンパンチで一発殴るだけじゃん。」
C男「アンパンチだって大して威力ないよね。ばいきんまんなんて殴られて『はひふへほー』とか叫んで飛んでくけど、次にはまた平気な顔をして登場してくるしね。」
D男「そのアンパンチだって時々使わないことがあるよ。ばいきんまんが気が変わって帰っていったり、あんまり見せ場がないよね。」
E子「アンパンマンってあまり戦わないでただパンをあげてるだけじゃないの?」
F子「パンをあげるといっても自分の顔でしょ。私、そこがなんかとってもキモい。」
G子「なんか自虐的で自己犠牲的だよね。全部あげたら自分が死んじゃうのにね。」
みんな「アンパンマンって、本当に正義のヒーローなのかな……。」

 この本は、教育の意義や目的などの基本的な原理について、その思想や哲学を「思考実験」を通して学ぶものです。例えば、正義についてアンパンマンを素材に正義のヒーローの定義を考えることにしました。分配の公正について、複数によるケーキ(ショートケーキ)の分け方を考えることにしました。競争の公正について、学校(運動会)での徒競走を素材に平等のスタートラインのあり方を考えることにしました。
 各講(章)冒頭の思考実験はみなさんにとって馴染みのある内容を示しています。思考実験をもとに自分の考えを持ったうえで読み進められるよう、いわゆるアクティブ・ラーニングの形式を意図しました。教育の問題を根本的に問う内容を扱っていますが、学術的な概念や引用は極力避けているため、お子さんと一緒にこの本を通じて教育の問題を考えることもできます。読者のみなさんが、この本をきっかけに教育学を「学ぶ」ことよりも、教育について身近に「考える」きっかけになることを望んでいます。

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目 次

第1講 アンパンマンは正義のヒーローか ―正義とは何か―
アンパンマンの正義とは/宇宙怪獣は悪者(ワル)か/桃太郎は正義のヒーローか

第2講 ケーキを正しく分けられない子どもたち ―分配の公正とは―
二人でケーキを正しく分ける方法/三人でケーキを正しく分ける方法/ケーキの公正な分配/コロナワクチンの公正な分配

第3講 平等のスタートライン ―競争の公正とは―
徒競走の方法とは/徒競走の考え方とは/徒競走の公平とは/そもそも運動会とは/徒競走を運動会のプログラムからなくすか?

第4講 金八先生の苦悩 ―授業の公正とは―
学力向上の方法/授業における公正とは/学力は遺伝的能力で決まる

第5講 教育評論家のポピュリズム ―学力の公正とは―
教育論の怪しさ/教育評論家の視野狭窄症/選択された真実/学力の視点/学力差は学力格差か

第6講 Aくんと自転車 ―障害児教育の公正とは―
合理的配慮/Aくんの進学/障害児の教育における平等論争/平等の選択の葛藤/障害児の平等権は誰が決めるのか

第7講 AI女子りんなとのチャット ―学習の哲学―
AI女子りんなとの会話/りんなのアルゴリズムとは/りんなの学習とは/AIは哲学できるか/哲学の進化

第8講 中国語の教室 ―言語の哲学―
二つの言語/チベット族Aくんにとっての言語/考える言語とは/人間は言語をどのように習得するのか/脳内言語における「正義」

第9講 いじめのジレンマ ―悪の哲学―
いじめの現実/いじめのジレンマ/学校・教師のいじめの認知/悪の認知/悪とは何か

第10講 100万回生きたねこはなぜ100万1回目に死んだのか ―死の哲学―
『100万回生きたねこ』のストーリー/死とは何かを考える/死は怖いか/死後の世界はあるか/死ぬまでにしたいリスト(BUCKET LIST)

第11講 手品師の約束 ―道徳の哲学―
道徳の授業/A子先生の「手品師」の授業/A子先生の板書/道徳的ジレンマ/サンデル教授のトロッコ問題

第12講 たこ焼き屋騒動 ―校内民主主義の哲学―
民主主義の政治哲学/多数決主義の横暴/校則の民主主義/校則改正運動と学校の民主化/ブラック校則の実態/校則の教育哲学とは/校則改正のムーブメント

第13講 教育バウチャーの自由 ―教育の公共哲学―
教育バウチャーとは/教育バウチャーのシミュレーション/教育バウチャー導入により学校はどうなるか/公立学校の未来予測/教育バウチャーによる教育の自由化/学校の民営化とは/学校の民営化の危うさ

第14講 学校に行かない権利 ―学習の制度哲学―
コロナ禍がもたらした一つの幸福/不登校の子どものための新たな学びの場/不登校支援の転換/学校休業期のオンライン授業はなぜ正規の授業にならなかったか/就学と修学の教育哲学/教育課程思想と就学様式


著者紹介
篠原 清昭(しのはら きよあき) 1953年生まれ。
岐阜聖徳学園大学教授 岐阜大学名誉教授
立命館大学法学部卒業、筑波大学大学院博士課程教育学研究科中退。博士(教育学、九州大学)。
九州大学大学院助教授、岐阜大学教職大学院教授などを経て現職。日本教育行政学会賞(2001年)、日本教育経営学会賞(2003年、共同受賞)。