「うまくいかない」から考える 若手教師成長のヒント

片山 紀子・若松 俊介 編著
四六判192ページ 定価:本体1,400円+税
ISBN978-4-909124-49-4 C3037

近年、学校現場ではベテラン教師が大量に退職し、若手教師が一気に増えています。大量に増えた若手教師は、些細なうまくいかないこと、そして多様なうまくいかないことに直面していますが、その「うまくいかない」が見過ごされがちになっています。
教師は、教育実習こそ経験しているものの、就職してすぐに学級担任を任されるなど、社会人1年目から現場での実質的なトレーニング期間なしに〝一人前〟であることが求められる点で、他の職種とは少し異なっています。若手にとっては過酷な仕事の一つと言えるかもしれません。教師になったその日から「うまくいかない」の連続だと思います。
本書は、こうした課題に応えるため、「うまくいかない」理由を考えたうえで、若手教師のリアルな失敗談から「うまくいかない」状況を改善、克服していくためのヒントを探っていきます。

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目 次

第Ⅰ部 「うまくいかない」先生
第1章 若手教師の「うまくいかない」を考える 片山紀子
⑴ 「知っていること」と「できること」は違う
⑵ なぜ「できない」のか
⑶ 日常的に起こる「うまくいかない」を省察する
⑷ 職能成長を支えるにはコミュニティがいる
⑸ 先輩も彼らの失敗からヒントを探ってみよう!
第2章 「うまくいかない」とどう付き合うか 若松俊介
⑴ 若手時代の「うまくいかない」
⑵ 「うまくいかない」との向き合い方の変化
⑶ 「うまくいかない」から学ぶこと、得た力
⑷ 今も「うまくいかない」と共に過ごす日々
⑸ 「うまくいかない」後輩とどうかかわるか

第Ⅱ部 若手教師12人のリアルな失敗談
1.「良い先生」と思われたくて A先生
⑴ 「良い先生」と思われたい
⑵ 保護者に「良い先生」と思われたい
⑶ 同僚・管理職に「良い先生」と思われたい
⑷ そういえばあの時も
若松の視点 相手の気持ちを無理矢理変えることはできない
片山の考察 「事実承認」を積み重ねてコミュニケーションの契機に
2.「助けて」が言えなかった1年目 B先生
⑴ 担任の仕事の多さに驚いた
⑵ 頑張ってみたものの
⑶ 自分を追い詰めていた
⑷ 先輩が眩しく見えて「助けて」が言えなかった
⑸ 生徒にも「助けて」が言えなかった
若松の視点 「助けて」を言い出しやすい環境づくりが大事
片山の考察 他者とのかかわりがヒントになる
3.ストレートに伝えるだけではうまくいかない C先生
⑴ はじめて持った学級
⑵ 生徒の嘘
⑶ 信頼されていない自分
⑷ ストレートすぎた自分
若松の視点 行動の理由をじっくり想像してみてください
片山の考察 自分の正義を押しつけることをやめてみる
4.曖昧だらけの学級経営で子どもが苦しむ D先生
⑴ 「丁寧に」「意識して」とは具体的にどういうことか
⑵ ざわざわしてしまう教室
⑶ 特別な支援が必要な子に対応できなくなった
⑷ 余裕がなくなると曖昧で雑になる
若松の視点 曖昧で不安になったらすぐ先輩に聞くことが大切
片山の考察 自分の言ったことがそのまま伝わるとは限らない
5.子どもの困りに気づけなかった E先生
⑴ 仕事に追いつかない自分
⑵ 子どもからの訴えと保護者対応に苦慮
⑶ その後も続くAさんの訴え
⑷ Aさんの訴えはなぜ?
⑸ 係活動を入れてみた
⑹ 子ども同士のトラブルが減った
若松の視点 学級として子どもたち同士の関係をつくることが大事
片山の考察 どんな子でも認められるような場面を用意するのが担任の仕事
6.授業が「おもしろくない」と言われた F先生
⑴ 初めて持つ「化学」
⑵ 化学、おもんないわ~
⑶ 失敗の原因① 初めてだから仕方ないという甘え
⑷ 失敗の原因② 全体をとらえられない未熟さ
⑸ こっそり自宅でやった模擬授業
⑹ その後
⑺ 生徒に感謝
若松の視点 さまざまな試行錯誤を経てよりよい授業ができるようになる
片山の考察 心底「うまくなりたい」と思うことが一番大事
7.収拾がつかなくなった研究授業 G先生
⑴ 初めての公開授業
⑵ 思い通りにいかなかった研究授業
⑶ 研究授業で初めて気づいた自分のまずさ
⑷ 授業は準備をたくさんした結果深くなる
⑸ 失敗を失敗と認識していなかった自分
若松の視点 授業は目の前の子どもたちのためのもの
片山の考察 粗探しではなく「できているところ」を見つける場に
8.自分一人で奮闘していた学級経営 H先生
⑴ 不登校の子どもを毎朝家まで迎えに行っていた
⑵ なぜ迎えに行くようになったのか
⑶ 焦りからの一方的な指導
⑷ 終わりの見えない女児のトラブル
⑸ 形骸化していた学級
若松の視点 自分一人で奮闘しない
片山の考察 最初の仕事の環境整備は上司の仕事
9.どの子にも目をかけていたつもりだったのに I先生
⑴ クラスの子がオンラインゲームで教員の悪口を言っていた
⑵ 子どもたちへのかかわりが公平ではなかった
⑶ 子どもたちの本音
⑷ 子どもたちとどうかかわるのが正解なのか
若松の視点 目指すものがあるから「〇〇のつもり」に気づくことができる
片山の考察 個を見ながら全体を見る
10.「なんとなく」ではうまくいかない J先生
⑴ なんとなく過ごした半年間
⑵ 担任になってしまった自分
⑶ 生徒指導ができない
⑷ 先輩の忠告
⑸ 指導法を変えてみたものの
若松の視点 学び続けることで「なんとなく」が解消される
片山の考察 コーチング的手法を自分にも使ってみる
11.自分の力以上に頑張りすぎた K先生
⑴ 初めての異動、初めての体育主任
⑵ マイナスを取り返したい
⑶ 学級経営も厳しくなった
⑷ 体調を崩して病気療養することに
⑸ 今できることを積み重ねる
若松の視点 自分をさらけ出してこそ、相手は支えてくれるようになる
片山の考察 疲れたらひと休みするのも選択肢の一つ
12.校務分掌を甘く見ていた L先生
⑴ 学級のことだけを考えていた自分
⑵ 先生‼ 今年の朝学習はどうなっているんですか⁉
⑶ この校務分掌ってこんなに大事なの!?
⑷ 事前にしっかりと根回しすること
⑸ 思い返せば過去にも同じことが
若松の視点 6年間を通して子どもを育てていくという意識が大事
片山の考察 みんながリーダーシップを発揮できるような手立てが必要

終章 若手教師の「うまくいかない」を支える 片山紀子
⑴ 教師の専門性
⑵ 教職大学院で大事にしている人間関係力の育成
⑶ 若手の成長は諸刃の剣
⑷ 成長を支えるコミュニティ

※第Ⅱ部の事例は若手教師の失敗がテーマであるため、本人・関係者が特定できないように編集しています。


編著者紹介
片山 紀子 京都教育大学教職大学院教授
専門は生徒指導、学級経営、アメリカの生徒懲戒制度
主な研究テーマは体罰や生徒懲戒制度
若松 俊介 京都教育大学附属桃山小学校教諭
「国語教師竹の会」事務局、「授業力&学級づくり研究会」会員
「子どもが生きる」をテーマに研究・実践を積み重ねている

※所属・職名は2021年8月現在