小川 義和・五月女 賢司 編著
四六判 320ページ 定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-909124-17-3 C0030
わが国には5000を超える大小さまざまな博物館がある。各館は自らの社会的使命のもと、限られた資源の中に強みを見いだし、関係機関や博物館どうしが連携・協働するなどの工夫をして地域の文化創造、教育機能を担っている。限られた資源を活用し、利用者のニーズを踏まえて、工夫を加え、他の博物館、公民館、自治体、学校などの関係機関と連携して、地域の人々を巻き込み、地域の文化創造に取り組んでいる博物館がある。
本書は、このような取組を実践し続ける博物館を「挑戦する博物館」と位置づけ、自らの博物館の弱み、強み、成果、工夫、経営、事業展開方法などを紹介し、博物館の「オモシロさ」を来館者に知ってもらうとともに、取組手法を実践者が解説することを通して博物館全体でそのノウハウを共有する。
Ⅰ部では、博物館の置かれた厳しい状況を述べるとともに、博物館にとって「挑戦」することの意味や方法について議論を深める。Ⅱ部では、「連携による挑戦」「博物館教育の挑戦」「利用者の視点からの挑戦」という3つの観点から「挑戦する博物館」を取り上げる。
2019年ICOM京都大会を見据え、「地域文化の拠点としての博物館」を実践し続ける博物館にはどんな「しかけ」があるのか。写真等を交えて解説し、わが国の博物館の「今」を国内外に発信する。
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目 次
序章 挑戦する博物館と三つの機能――変化し、見直され、発展する博物館の姿
Ⅰ部 博物館の魅力再発見
1章 地域の文化を創り、育て、継承する博物館
2章 鼎談 博物館にとって「挑戦」とは
Ⅱ部 挑戦する博物館
1章 連携による挑戦―Collaboration
① 市民どうしの繋がりを生む くにたち郷土文化館――市民参加型の博物館活動
② 館内制作から生まれた戦略と連携 足寄動物化石博物館――確かな制作技術にもとづく博物館活動の展開
③ 高槻の自然がわかるみんなの博物館を目指して あくあぴあ芥川――複数NPOによる共同運営の取り組み
④ ふたたび蘇る篠山チルドレンズミュージアム――長期休館からの挑戦
⑤ 探して、迷って 平野・町ぐるみ博物館――町の有志による住民主体の博物館活動
⑥ なにわホネホネ団と東北遠征団――博物館で楽しみ、博物館を支え、博物館をとび出す市民サークル
2章 博物館教育の挑戦―Education
① まちに欠かせないミュージアムに 美濃加茂市民ミュージアム――ずっと利用される地域博物館を目指して
② 企業との連携とキャリア教育を目指した試み 千葉市科学フェスタの新たなねらい――都市型地域博物館の取り組み
③ 文理融合型のリレーワークショップ おびひろ動物園――異種館連携の取り組み
④ 市街地一帯が展示会場 鳴く虫と郷町の取り組み――館事業から街の事業へ
3章 利用者の視点からの挑戦―Users
① キッズ・ミュージアム・スクールの挑戦――異種館タッグによる博物館リレーワークショップ
② ロケットもタイムマシンもないけれど 蒲郡市生命の海科学館――アートの手法で科学を伝える取り組み
③ 博物館と利用者の関係とは? 博物館利用者像を探る研究――PCALi蓄積データから得られた示唆
④ 博物館の思い出を残す アルバム辞典の様々な活用法――博物館の新たな楽しみ方の提案
終章 人々は博物館に何を求めているのか――博物館の三つの価値をどう捉えるか
執筆者一覧(所属・執筆担当、執筆順)
小川 義和 (国立科学博物館連携推進・学習センター長/序章・Ⅰ部2章・終章)
五月女 賢司(吹田市立博物館学芸員/Ⅰ部1章・Ⅰ部2章)
高田 みちよ(高槻市立自然博物館(あくあぴあ芥川) 主任学芸員/Ⅰ部2章・Ⅱ部1章③)
安齋 順子 (くにたち郷土文化館学芸員/Ⅱ部1章①)
新村 龍也 (足寄動物化石博物館 学芸員/Ⅱ部1章②)
澤村 寛 (足寄動物化石博物館 学芸員・館長/Ⅱ部1章②)
安藤 達郎 (足寄動物化石博物館 学芸員・副館長/Ⅱ部1章②)
田中 嘉寛 (大阪市立自然史博物館 学芸員/Ⅱ部1章②)
垣内 敬造 (篠山チルドレンズミュージアム館長/Ⅱ部1章④)
川口 良仁 (平野の町づくりを考える会・全興寺住職/Ⅱ部1章⑤)
西澤 真樹子(認定特定非営利活動法人大阪自然史センター・なにわホネホネ団/Ⅱ部1章⑥)
可児 光生 (美濃加茂市民ミュージアム館長/Ⅱ部2章①)
森井 映美子(株式会社トータルメディア開発研究所ディレクター/Ⅱ部2章②)
杉本 加奈子(おびひろ動物園学芸員/Ⅱ部2章③)
坂本 昇 (伊丹市昆虫館副館長/Ⅱ部2章④)
緒方 泉 (九州産業大学地域共創学部教授/Ⅱ部3章①)
西嶋 昭二郎(福岡市立舞鶴中学校教諭/Ⅱ部3章①)
山中 敦子 (蒲郡市生命の海科学館館長/Ⅱ部3章②)
奥山 英登 (国立アイヌ民族博物館設立準備室研究員/Ⅱ部3章③)
原田 雅子 (八洲学園大学非常勤講師/Ⅱ部3章④)
※所属は2018年4月1日現在